惨敗ハーツ10着 有馬でリベンジ

現役続行か?

惨敗ハーツ10着 有馬でリベンジ

 まさかの失速だ。「ジャパンカップ・G1」(26日、東京)、道中は好位の3番手を追走していたハーツクライだが、4角手前でルメールの手綱が激しく動く。それでもまったく反応を見せず、ズルズル後退。鞍上の叱咤(しった)激励もむなしく、ブービーの10着に敗れた。
 引き揚げてきたルメールは「ノドは鳴っていたが、それはいつものこと。4コーナーから気配がおかしかった。何で急に止まったか分からない」と腑(ふ)に落ちない様子。この1年、ドバイ、英国を渡り歩き、一緒に戦ってきたパートナーのこの日の走りに、ただ首を傾けるだけだった。
 あまりのショックで落ち込む橋口師は「あんなぶざまな競馬をするような馬ではない。ハーツクライではない別の馬だった。このままではハーツのイメージが壊れてしまう」と引退をほのめかすようなコメントも出たが、オーナーである社台ファーム代表の吉田照哉氏は現役続行を宣言。「間隔があきすぎていたからね。もしかしたらノドの症状が進行しているのかもしれない。まったく競馬になっていないし、有馬記念(12月24日・中山)へ使う。そこで好走すれば、来年もドバイに行くかも」と復活を願っていた。
 ノド鳴りといえば、手術で病を克服したダイワメジャーの例がある。だが吉田照哉氏は「手術は考えられない。メジャーは3歳の時だったけど、これだけの成績を残している馬だからね。あえて危険をおかす必要はない」と完全否定。ディフェンディングチャンピオンとして臨む有馬記念は“選手生命”をかけた戦いになる。




開催競馬・主な出来事

> 11月25日(土)
・5回東京第7日

3R【疾病発症】
 1番ブラックジュニア(大野拓弥騎手)は、競走中に疾病(心房細動)を発症した。

7R【疾病発症】
 14番アジャリ(C.ルメール騎手)は、競走中に疾病(鼻出血)を発症した。

12R【疾病発症】
 14番ラドランファーマ(津村明秀騎手)は、競走中に疾病(心房細動)を発症した。

・6回京都第7日

4R【競走中止
 9番シゲルフドウカブ(今村康成騎手)は、競走中に他の馬に関係なく馬体に故障を発症し、2周目4コーナーで競走を中止した。
馬:左第1指関節開放性脱臼 ※予後不良
騎手:異状なし

10R【疾病発症】
 14番ゼンノトレヴィ(田島裕和騎手)および16番トーコーペルセウス(川島信二騎手)は、競走中に疾病(鼻出血)を発症した。


> 11月26日(日)
・5回東京第8日

6R【疾病発症】
 8番フーフー(村田一誠騎手)および12番ジュンノホープ(竹之下智昭騎手)は、競走中に疾病(心房細動)を発症した。

8R【出走取消】
 2番スペシャライズ ※右肩跛行のため




ドリーム2着、岩田が称賛/ジャパンC

ジャパンC> 26日=東京 G1 芝2400メートル 3歳上 出走11頭
 ドリームパスポートは直線で内からいったん先頭に躍り出た。3歳馬が、最強馬と真っ向勝負。最後の1ハロンでかわされ2馬身の差をつけられたが、価値ある銀メダルだ。岩田騎手は「道中、何度かハミをかんだ。あれがもう少しスムーズなら、もっとはじけていたと思う。すごい瞬発力。3歳でここまで走れば…」と、悔しさと相棒への称賛を織り交ぜていた。
 欧州年度代表馬ウィジャボードを3着に封じ、同世代の2冠馬メイショウサムソン菊花賞に続いて先着した。デビューから12戦を消化したが、まだ1度も3着を外していない。今回も距離、コース、展開、相手と、すべてを今まで通りに克服。松田博師は「来年は王者? また違う馬が出てくるんやで。でも、この馬はもっと良くなる。次? どうもなければ、有馬記念に行く準備をせなあかん」と期待を膨らませていた。




ディープやっぱり最強!復活6冠…ジャパンC

 ジャパンカップ(26日・東京競馬場) 怪物が高々と日の丸を掲げた。26日に東京競馬場で行われた国際G1のジャパンカップは、武豊騎乗のディープインパクトが本来の実力を見せ付けて「6冠馬」の称号を得た。フランスの凱旋門賞後に薬物が検出されて3着から失格となったが、見事な復活劇だった。ラストランの有馬記念(12月24日、中山競馬場)は、ディープ一色に染まりそうだ。

 飛んだ−。地鳴りのように響く歓声の中、小柄な鹿毛馬が、ライバルを一方的に突き放していく。これまで何度も見てきた光景。ディープインパクトは、やはり日本の英雄だった。

 府中の広い直線。その真ん中を完歩の大きいフットワークではじけ飛ぶ。ライバルは関係ない。ただ、自分の走りをするだけだ。内で粘るドリームパスポートに、2馬身差をつけての快勝劇。ゴールに入る前に、武豊が小さくガッツポーズを作る。数々の栄冠を手にしてきた天才も、喜びは抑え切れなかった。

 表彰式でディープの背にまたがる武豊は、12万人が詰めかけたスタンドに向かって何度もバンザイを繰り返す。「飛びましたね。変わりなく、ディープはディープでした。先生(池江泰郎調教師)の顔を見ると、胸が熱くなってきそうだった」。凱旋門賞は3着に敗退。その後、禁止薬物の検出で失格処分を受けた。周囲の騒動を含め、すべてをリセットして臨んだ戦い。何よりも結果が求められていた。

 すべてが“いつも通り”だった。スタートの出が悪く、前半は最後方から。3角を過ぎて進出するのも同じだ。「(4角手前で)ウィジャボードがちょっと内めに入った時、外に行けるいい形になった」もう、何の障壁もない。スローペースを大外からまくり、上がり(最後の600メートル)33秒5の豪脚でライバルをのみ込んだ。

 吉兆はあった。発走前に集合合図が出た際、昨年5月に5馬身差で圧勝したダービーと同じ場所で、同じように物見をするしぐさを見せた。「あれで勝ったと思った」とスタッフに打ち明けたユタカ。有能なサラブレッドは、自分の経験を忘れない。ディープ自身が何をすればいいのか分かっていたに違いない。

 ディープは、今年限りで引退。来年からは種牡馬になる。武豊が最強のパートナーと戦うのは、あと1回だけだ。12月24日の有馬記念(中山)がラストラン。「もっと乗りたいですよ。でも、僕が決めることではない。ラストにすべてをかけて乗りたい。最高のレースをしたいと思っている」と強い決意を披露した。クリスマスイブには、衝撃のフィナーレが待っている。




パスポート大健闘2着…ジャパンC

 ジャパンカップ(26日・東京競馬場) 堂々と正攻法の競馬で抜け出した、はずだった。しっかりと脚を伸ばし、後続を振り切ったかと思えた直線。ドリームパスポートの視界の片隅を、ディープインパクトが駆け抜けていった。抵抗するには脚いろがあまりに違う。ウィジャボードの追撃を抑え、粘り込むのがやっとだった。

 2馬身差の2着。どう挑んでも勝てない完敗に見えたが、岩田は自らの騎乗に悔いを残していた。「中団くらいに位置したけど、道中ハミがかかってしまって…。何度かハミをかんでしまった。その割にはしっかりしてるし、最後はすごい瞬発力。だからもったいなかった。スムーズならもっと弾けていたんじゃ…」

 日本一の馬に、あるいはもっと迫れたのかもしれない。だが、欧州年度代表馬を半馬身抑えての2着は健闘だろう。事実、松田博調教師の表情は晴れやかだった。「あそこまで走れたのはホンマすごいよ。東京まで輸送して体重が変わらないということは、また大きくなっているんだろう。こうなったら有馬記念も考えないとあかんやろ」と次の目標を口にした。

 12戦して【3630】。G1の2着は皐月賞菊花賞に続く3回目となり、対メイショウサムソンは3戦連続で先着した。もはや押しも押されもせぬ3歳代表は、暮れの大一番で改めて大きな山に挑む構えだ。




池江泰郎調教師「ディープありがとう」…ジャパンC

 ジャパンカップ(26日)ディープインパクトと苦楽をともにしてきた池江泰郎調教師は、改めて偉大なサラブレッドに感謝の念を表した。一方で昨年の有馬記念ハーツクライは10着に完敗し、明暗がくっきりと分かれた。2着は3歳馬ドリームパスポート、3着に欧州年度代表馬ウィジャボードが入った。

 経験したことのない熱い思いがこみ上げる。信じていたディープインパクトが大外から突き抜けた瞬間、池江郎調教師の感動は沸点に達していた。

 「胸がジンとして…。体が熱くなって体内の(うれし)涙はいっぱいでした。私もこれまで何度かG1をとらせてもらいましたが、こんな思いは初めて。ディープにありがとう…。それだけです」と心の中で頭を下げた。

 負けるわけにはいかない一戦だった。凱旋門賞を勝てなかった悔しさが冷めないまま、突然の引退発表、そして直後に持ち上がった薬物騒動、凱旋門賞失格の裁定。たった2か月の間に多くのことがありすぎた。「自分にとっては1年と思えるような長く苦しい時間でした。でも、人生は山あり谷あり。つらい時もあれば、また倍になって返ってくるのかな」そう自分に言い聞かせてきた。

 社会現象と化したディープ・フィーバーは一部でバッシングに変わっていた。押しつぶされそうになった時、力をくれたのはやはり、愛馬だった。「何も知らないディープの姿を見ていると、こんなふうじゃダメだと勇気をもらった」強さを証明するために立ち上がった。ジャパンCに的を絞って攻め抜いた。それは「436キロ」という、極限まで絞ったデビュー以来最低の体重に表れていた。

 直線で耳をつんざくようなファンの大歓声がうれしかった。「ディープ! ディープ! という声が聞こえてきました。本当に偉大な馬だなと思います。応援してくださったファンの皆さんに感謝したい。もう一度、ディープらしい走りを見せるために、短い時間ですが有馬記念へ向けてディープとやっていきたい」−指揮官は史上最強馬の完全燃焼を誓った。