アルティマトゥーレ有終Vあるぞ!

 サッカーのJリーグ、プロ野球パ・リーグが開幕したが、競馬界も桜の開花とともにいよいよ春のG1シリーズが今週からスタートする。第1弾は最強スプリンターを決める「第40回高松宮記念」。その最終追いが24日、美浦トレセンで行われた。このレースがラストランとなるアルティマトゥーレが降りしきる雨を物ともしない、弾むような脚さばきで究極の仕上がりをアピール。絶好調男横山典弘騎手(42)をパートナーに有終Vを目指す。

 何の奇遇か?アルティマトゥーレがコースに登場すると、惜別の涙雨は激しさを増した。奥平師もぴったりと角馬場まで付き添って、その鼓動を肌で感じていた。雨のカーテンの中、パートナーの藤原助手を背にしなやかに愛用のポリトラックコースを半周。手綱をしっかり押さえ、4F52秒7〜1F13秒1(馬なり)の時計をマーク。ラストランだからこそ、普段着の「静」に徹した。

 無事、最終リハーサルを終えた奥平師は万感の表情。数々の思い出をたどるように切り出した。

 「先週5Fからやって、気合の方も乗っている。やりすぎればオーバーワークになりかねないので、きょうはサッと仕上げた。シルクロードSを勝った後は山元トレセン宮城県)で放牧。スイッチを一度切ったことで、メリハリの利いたいい調教ができたと思う。思い出?美浦に来たのが何かの運だったんでしょう」

 栗東森秀行厩舎で06年12月にデビューV。しかし、体質が弱く、3歳時に1年5カ月間もの長期休養。08年に奥平厩舎に移籍してきた。転機は07年秋に美浦に新登場したポリトラックコースだった。脚部に負担をかけない新素材馬場。「美浦に来て大正解。ポリトラックがよほど合っていたんでしょう。もう少し早く栗東にポリトラックが完成していたら、うちに来ていたかどうか?」。

 転厩後は5勝を積み上げ、昨秋はG2セントウルS優勝。スプリンターズS(5着)で1番人気に推されるほどに成長した。師の5歳上にあたる横山典は助手時代から勝手知った仲。「けんかもしたし、忌憚(きたん)なく意見もぶつけてきた。ゲートインまでは僕らの仕事。ゲートに入ったら、ジョッキーに任せるだけ」。師は絶好調男に全幅の信頼を寄せている。

 今年初戦のシルクロードSは2番手からあっさりと完勝。引退なのが惜しいくらい充実の6歳春だ。しかも、舞台の中京芝1200メートルは2戦2勝の得意コース。「条件戦だったとはいえ、前日輸送で現地で1泊する競馬で結果を出しているのは心強い。スプリンターズSで結果を出せなかった分、最後のGIに懸ける思いは強い。何とか、結果を出して引退させたいんです」

 人事を尽くして、天命を待つ。指揮官は有終Vをただただ祈っている。