インパクト有馬記念当日に引退式

有終の美を飾れるか?

 ディープインパクト(牡4、栗東池江泰郎)の引退式が、有馬記念当日の中山最終レース後に行われることが分かった。現在、JRAとオーナーサイドで内容などについて最終的な調整を行っている。

 インパクトは有馬記念を最後に引退、その後は種牡馬として総額51億円(8500万×60口)のシンジケートが組まれることが決定している。レース後にいったん栗東へ戻り、再調整しながら競馬場で引退式となると、体調面だけでなく輸送のリスクも伴う。最近では03年の優勝馬シンボリクリスエス、05年のタップダンスシチー(12着)が、有馬のラストラン後に競馬場でセレモニーを行った。

 凱旋門賞から帰国初戦のジャパンCを2馬身差で勝ったインパクトは、すでに有馬記念へ向けて11月30日から馬場入りを再開している。昨年はハーツクライに敗れただけに、何としても勝って引退の花道を飾りたいところ。勝てばG1・7勝となり、シンボリルドルフテイエムオペラオーと並びG1最多勝となる。惜しまれつつ引退するスーパーホースが、10万を超える多くのファンの前で、別れを告げる。





ダイドウ、父譲りのスピード 朝日杯FS

 伝説の名勝負が、今週の中山でよみがえる。無傷の3連勝で人気を集めるオースミダイドウ(牡、栗東中尾正)はダービー馬スペシャルウィークの子。一方、京王杯2歳Sの覇者マイネルレーニア(牡、栗東・西園)の父は怪物グラスワンダーだ。99年の有馬記念で死闘を演じた名馬の2世たちが、G1の大舞台で激突する。

 オースミダイドウの強さの最大の秘密は、オンとオフとの切り替えにある。「普段は本当におとなしい馬なんです。それが競馬に行くとグンとテンションが上がってくる」と担当の塩満助手。馬房の中では前に人が立っても我関せずの構え。ボーッと見えるぐらいの落ち着きよう。そんな馬が競馬場に行くと雰囲気が変わる。パドックでは気合が乗って発汗も目立つ。温厚な馬が戦闘モードに変身する。「(悪いことを)やるときはすごい」。闘志を解放したときの爆発力が、負け知らずの強さの原動力だ。

 もちろん、連勝の根底には肉体の強さもある。500キロを超える雄大な馬体だが、胴と脚が長く、細身でスラッとさえ見える。いかにもスペシャルウィークの子供といった印象だ。父の手綱も取ったことがあるペリエ騎手は「バネがいいし、グッとくる脚があるね。こんな(軽い)乗り方でも反応する。見せムチでも反応していた」と語る。8日の調教で初めて騎乗。軽めのキャンターだったが、抜群の感触を得た。父譲りのバネが、スピードにつながっている。

 塩満助手はかつてオースミブライトを担当していた。2歳戦から活躍し、99年の皐月賞テイエムオペラオーの2着。神戸新聞杯も制した活躍馬だ。「あの馬は賢くて扱いやすかった。ダイドウはタイプが違うし、つかみ切れない面がある」。2頭の比較は難しいと笑うが、秘めた素質は互角かそれ以上だと確信する。「ダイドウにはまだまだ底知れない面がある。相当に奥が深いと思う」。無傷の4連勝で頂点へ−−2歳王者に一番近い位置にいるのは、間違いなくこの馬だ。





レーニア、抜群の勝負根性 朝日杯FS

 マイネルレーニアの鮮やかな栗毛の馬体は、ひと目見ただけでグラスワンダーの産駒と分かる。腹袋をボテッと見せる馬体もそっくりだ。偉大な父から受け継いだのは、よく似た馬体だけではない。京王杯2歳Sでは抜群の勝負根性を発揮した。「負けパターンだと思っていたけど、最後はよくしのぎ切ってくれた」。担当の甲斐助手は前走を振り返る。外からマイネルフォーグが迫りくると、再びエンジンが点火して、もうひと伸び。単なるスピード馬ではないことを証明してみせた。

 大跳びできれいなフットワークをする馬。開幕2週目の中山は望むところだ。「この前の東京は雨で馬場が悪かったからね。乗り役も良馬場の方がいいと言っていた」。着差はわずかだったが、まだまだ上積みは計算できる。京王杯2歳S→朝日杯FSは父が歩んだ同じ道(当時は京成杯3歳S)。9年前、圧倒的な強さで頂点に立ったあの強さを再現してみせる。





フォーグ、マイルは向く 朝日杯FS

 京王杯2歳Sでは首差の2着に終わったマイネルフォーグだが、ゴール前の勢いは勝ち馬より上だった。「前走はよく頑張ってくれたね。1400メートルよりマイルの方がいいと思うし、少しキツい気性が実戦でいい方に出ている」とベテランの立山厩務員。前前で流れに乗れるスピードとセンスは魅力。前走の競馬を再現できれば怖い。





シーガル魂の走り 前走落馬寸前の不利も直線一気差し…10日・朝日杯FS

  朝日杯FS(10日・中山) 2歳戦の強さに定評のある「マイネル軍団」が、大挙5頭登録してきた。東のエースはマイネルシーガル。芝1600メートルの日本レコードを持つ新種牡馬ゼンノエルシドの産駒で、強烈な末脚を武器にしている。西の切り札はマイネルレーニア。97年のこのレースの覇者グラスワンダーの子だ。血統的に中山のマイルはベスト。陣営も虎視たんたんとチャンスをうかがっている。

 父から受け継いだマイル適性を、GIの大舞台にぶつけてみせる。マイネルシーガルが、自慢の末脚を武器に、2歳牡馬の頂点を狙っている。

 前走のいちょうSも1600メートル戦。向こう正面で落馬寸前の大きな不利を受けながら、後方から突き抜けてデビューV2を飾った。

 「普通の2歳馬だったら、あそこで嫌気をさしてもおかしくなかった。それを一気に伸びてきたからね」とコンビを組む後藤。不利を受けた際に右ひざの裏に外傷を負ったが、大事には至らず、2週間ほど短期放牧に出し、通常通りの調教メニューをこなしてきた。

 父は新種牡馬ゼンノエルシド。同じ中山のマイルで行われた01年の京成杯AHで1分31秒5の日本レコードを叩き出した馬だ。デビュー戦は馬っ気全開でレースをするなど、気性の悪さも特徴のひとつだったが、後藤は「この馬は、気性の荒さがいい方向に出ていると思う」という。「馬房の中では余計なことをしないでジッとしているけど、いざまたがると、やる気になる」と話したのは佐藤助手。オンとオフの切り替えができるからこそ、勝負どころで決め脚を使えるのだ。

 今年の2歳戦線は、先週の阪神JFを勝ったウオッカ(父タニノギムレット)をはじめ、新種牡馬の産駒が大活躍。全9重賞で5勝を挙げている。「厳しいレースをしてきた分、最後まで頑張れるはず」と後藤。2年前のレコルトに続く「マイネル」での勝利を狙っている。バレンティン本格化の気配/鳴尾記念

 阪神では土曜メーンに鳴尾記念(G3、芝1800メートル=9日)が行われる。新設された外回りの1800メートルを舞台にどんな競馬が行われるか? 強烈な末脚で福島記念を快勝した良血サンバレンティン(牡5、栗東・佐々木晶)がいよいよ本格化の気配。マイルCSは12着と不本意な競馬に終わったマルカシェンク(牡3、栗東・瀬戸口)も調子を上げており、ここは巻き返しの期待がかかる。