巻き返し狙うアグリ

リベンジできる?

 京王杯2歳Sで4着に敗れたゴールドアグリ(父タニノギムレット)が巻き返しを狙う。斉藤助手は「使ってから体が締まって来た。前走は距離も忙しかったし、マイルになるのはプラス。短い距離を経験した分、行きっぷりも良くなるでしょう」と語った。勝った新潟2歳Sではスローながら、上がり3ハロン33秒0の決め手を見せた。02年ダービーを制した父親譲りの末脚でG1奪取を狙う。




テクノ父そっくりの走法

 ジャングルテクノに大駆けの予感が漂う。「前走で破った相手がG1で4着。やれる気がしてきた」。調教パートナーの額田助手のトーンも上がる。

 前走の500万戦で2着に退けたローブデコルテが阪神JFに出走(8枠17番)。終始、外を回る展開ながら、最後はよく伸びて4着に食い込んだ。福永騎手が「内枠だったら違っていた」と悔しがるレース内容。その馬を負かしたのだ。平場の500万を勝ち上がってのG1挑戦とはいえ、対戦比較からテクノの存在が大きく浮上してくる。

 01年のダービーとジャパンCを制したジャングルポケットの初年度産駒。額から鼻筋までスッと伸びた流星は血の証明。夏の函館では父を担当していた星野厩務員からも「よく似ている」と声を掛けられた。見た目だけではなく、気の荒さや少し首の高い走り方も現役時代の父の姿をほうふつとさせる。

 心身共に幼さを残す現状だが、額田助手が確かな成長を感じとったシーンがある。前走の直線で見せた走り。「残り1ハロンでグッと首が下がったんですよ。馬体が沈んでいいフォームになった」。一瞬のことだったが、それが接戦を制した一因にもなった。あの走りを持続できるようになれば、さらに上のステージを狙えるようになる。

 「大目標のG1。今回はギリギリに仕上げて行きますよ」。前走のしぶとさは見どころ十分。大舞台で栄冠をつかむ力はある。





シーガル父に負けない根性

 今週も新種牡馬旋風が吹き荒れる。先週の阪神JFではタニノギムレット産駒のウオッカが優勝。今週はゼンノエルシド産駒のマイネルシーガル(牡2、国枝)、ジャングルポケット産駒のジャングルテクノ(牡2、栗東・大久保龍)、タニノギムレット産駒のゴールドアグリ(牡2、戸田)が、父に続けとG1タイトルを狙う。

 勝利への執着心なら、右に出るものはいない。マイネルシーガルはいちょうSで落馬寸前の不利を受けた。3コーナー手前で外から押し込められる形になり、中団後方まで下がった。キャリア2戦目の若い馬にとっては、精神面で大きなダメージを負ってもおかしくない。右前脚は外傷し、歩様も乱れた。勝ったにもかかわらず、騎乗していた後藤騎手がレース後、「なんともなければいいけど」と案じたほどだった。

 だが直線では追われるごとに伸びて、先に抜け出したエイシンイチモンジを首差とらえた。国枝師は「外傷そのものはたいしたことなかった。つまずいて歩様がおかしくなったが、今回への影響はない。レースに行けば、馬が『頑張ろう』って気になる。前向きな馬」と評する。2歳馬同士の戦いなら、タフな心は何よりも大きな武器になる。

 フライングアップルを出走させる藤沢和師は「今週は国枝厩舎の馬が強いだろ。ゼンノエルシド(現役時代は藤沢和厩舎)の子だし応援してるんだ」と冗談を交えつつエール?を送る。 前走後は放牧を挟んで、2歳G1に備えた。「いちょうSの後は、もともとここ一本に絞って調整するつもりだった」とトレーナーが話すように、今年の最大目標だ。帰厩後は2週連続で坂路で51秒台をマークしており、順調に調整を進めている。

 国枝師は「すごく冷静な馬で余計なことを考えなくていいし、乗り手も操作しやすい。道中で掛かるような燃費の悪さもないし、今はやりのハイブリッド(※)ってやつ。先々に向けて折り合いってのは重要だから」と将来性にも期待を寄せる。父はデビュー戦で馬っ気を出しながら勝ったが、シーガルはレースに行けば集中できる気性がある。勝負根性を武器に、G1タイトルをもぎ取る。





ヘッド巻き返しに陣営手応え

 京王杯2歳Sの敗戦で人気を落としたアドマイヤヘッドだが、陣営は巻き返しに手応えを見せる。「前走は横を向いているときにゲートを切られた。この馬の競馬ができれば結果はついてくる」と島助手。デビュー戦で見せたセンスのいい競馬を再現できれば、ここでも勝負圏内だ。





ビーエルは距離延長カギ

 1200メートルで2勝のエーシンビーエルは距離延長が課題となる。小川助手は「2走前の1400メートル戦は、スタートが速すぎて前に壁を作れなかったが、前走はタメられた。距離延長はどうなのか分からないが、短距離馬というわけではないと思う」と語った。





小柄も根性あるジャーニー

 東スポ杯2歳S3着のドリームジャーニーは坂路で調整を行った。池江泰寿師は「前走は攻めを強くしてテンションが上がった。今回はいかにソフトに仕上げるかポイント」とテンションを課題に挙げた。前走の馬体重が420キロと小柄だが「カイ食いが良くて少し増えてそうだし、馬体の心配はない。後方で折り合えば、いい末脚は出せる」。小柄な体でG1を制した父ステイゴールドに続けるか。





アップルはもう完熟…10日・朝日杯FS

 東の期待はチャンピオントレーナーが送り出すフライングアップル。(外)の素質馬は、あふれるレースセンスの持ち主だ。

 自在の脚質は、経験の浅い2歳戦で圧倒的な武器になる。粒ぞろいの若駒が集まる藤沢和厩舎の中にあって、フライングアップルはそのセンスの良さで、指揮官のお墨付きをもらった。

 東京スポーツ杯2歳Sは芝1800メートル戦らしいスローな流れとなったが、中団でぴたりと折り合った。直線での3頭の叩き合いでは優勝したフサイチホウオーの末脚に屈したものの、ゴール前でもうひと度伸び。この頑張りで半馬身差の2着に踏ん張った。「他の馬を見ながら、自在に立ち回っていたからね。ペースが遅かったというのもあるけれど、なかなかできないこと」と藤沢師の評価は高い。

 今年の米ファシグティプトン・コールダーのトレーニングセールで50万ドル(約5750万円)で落札されただけに、早い時期から仕上がりの良さが目立った。「手間がかからないということもあって、夏場にデビューさせることができたからね。まだ、子供っぽいところを見せることはあるけれど、とにかく競馬はうまい」

 中2週続きのローテーションということもあり、この中間はハードな調教を課されていないが「体はできているので、今回はそれほどやらなくても心配いらない」と体調面でも自信をのぞかせた。

 ポイントは初のマイル戦に尽きる。「これまでよりも速い流れになることでこの馬がどう動けるかだけど、大丈夫だと思う。スタートもいいから」とトレーナー。95年のバブルガムフェロー以来となる2歳牡馬チャンピオンに向け、視界は良好だ。





ゲレイロ、本田色に染まった

 重賞で連続2着。あと一歩で大魚を逃してきたローレルゲレイロが頂点の大一番で真価を問う。手綱を執る本田はエリザベス女王杯カワカミプリンセスで無念の12着降着。引退が噂される大ベテランにとっても正念場の一戦だ。

 一番早い6月の函館でデビューして半年。ローレルゲレイロは一歩ずつ、力を付けてきた。勝ち星こそ挙げられなかったが、重賞で2着2回。デイリー杯2歳Sでは、オースミダイドウに半馬身差に食い下がっている。

 その前走で力を認識したというのが、昆調教師だ。「放牧明けで体が緩んでいたし、1600メートルも輸送競馬も初めて。4コーナーで逃げた馬がバテて追い出しを待たされたうえ、外が伸びる馬場で内から突っ込んできた。勝ちに等しい価値があったと思うよ」

 その後は京王杯2歳Sを使う案もあったが、本田の進言もあり待機。結果、実りある充電となった。「10キロ以上増えてトモ(後肢)の筋肉がついた。筋肉のバランスも良くなった」と昆師。本田も「走りたがっている。弾けそうな感じ」と成長を実感している。

 昆師の信念は「安心して真っすぐ追える馬を作る」こと。「競馬はコンマ何秒の世界。もたれたり、口向きが悪かったり…というのがなければ勝つ可能性があるからね」だから、調教、レースを通して課題を修正してくれる本田の存在は大きい。「1回1回、その馬にリズムに合わせて、いじってくれる。信頼して乗ってもらっているよ」

 この夏、本田はレース中の事故で複数か所を骨折。全治2か月の診断だったにもかかわらず、1か月近く早く復帰して函館2歳S(2着)に騎乗した。思い入れの強い若駒は、くしくもカワカミプリンセスと同じキングヘイローの子。エリザベス女王杯(1位入線も12着降着)の汚名を返上するには、絶好の機会だ。

 「函館では申し訳なかった。だからこそ、本田君でG1を取れればと思っている。(本田は)来年で引退とも言われているから、一発狙ってもらいたいね」と昆師。“職人コンビ”は静かに、熱く燃えている。




インパクト引退の日に弟が競演か

 クリスマスイブにインパクト兄弟が雄姿を披露する。

 ディープインパクトの半弟で3日阪神新馬戦を快勝したニュービギニング(牡2、栗東池江泰郎、父アグネスタキオン)の次走は、24日中山のホープフルS(オープン、芝2000メートル)が有力となった。「年内にもう1回使う予定がある。出張馬房の関係もあるが、中山も希望に入っている。そうなればお兄さんと一緒の日に使うことになるからね」と池江泰郎師。ホープフルSは兄の引退レースとなる有馬記念の日の中山6R。最初で最後の兄弟競演となる。

 兄インパクトはこの日も坂路→Dウッドの調整。ジャパンC後も順調な乗り込みを続けている。「有馬記念の後には引退式も行われる。ファンの皆さんには最後にふさわしいレースをお見せしたい。1つ1つ、気を引き締めてやっていく」(同師)。ラストランに向けての調整は怠りない。