復権へ!ブエナビスタ 主役は譲らん

ブエナビスタ 主役

 雪辱、そして女傑襲名へ−。今春の2冠牝馬ブエナビスタが23日、栗東トレセンCWコースで有馬記念に向けて追い切りを行った。単走で6ハロン83秒9、終い1ハロン12秒1。最後を伸ばすことを主眼にした内容で、陣営の思惑通りの調整だ。今回初コンビとなる横山典弘騎手(41)は、仕上げは厩舎スタッフに任せ、自身は美浦で調教に参加。「とにかく無事に走ってくれれば」と本番で最大限に力を引き出し、期待に応える。

 無敵を誇った春から苦難の秋を越えて、2冠牝馬が渾身の仕上げで頂点に挑む。

 前日までの強風はやんだとはいえ、底冷えのする栗東トレセン。調教スタンドの記者席は外の寒さを感じさせない熱気を帯びていた。視線の先にはブエナビスタ。この馬が今年の年末GPの主役であることは、他の馬との注目度の違いから明らかだ。

 ふだん通り調教パートナーを背にCWコースに先導役の2頭に導かれて入ってくると、ゆったりとスタート。霜が溶けたためか、見た目以上に力の必要なウッドチップを跳ね上げて、ブエナが躍動した。コースの外めを回り、直線では鞍上が気合のムチを2発。時計のかかる馬場で単走だったため、見た目の迫力はもうひとつに映ったが、6ハロン83秒9、3ハロン39秒4−12秒1とラストの伸びはしっかりしたものだった。

 調教をじっくりと見届けた松田博資調教師は満足そうに調教師席から立ち上がり、引き上げてきた愛馬の様子を見極めた。

 「最後を伸ばす調教。少し(時計は)かかりましたが、調教自体はいつも通りに変わりなくきています。順調にきているのが一番。いいんじゃないですかね」

 自信の笑みがこぼれた。春は桜花賞オークスをケタ違いの末脚で差し切ったが、秋は秋華賞で2位入線後に3着降着エリザベス女王杯は大逃げを打った2頭を捕らえきれずに3着という不本意な結果。嫌な流れを断ち切る意味もあり、今回はそれまでの安藤勝己から横山典弘に騎手をスイッチ。乗り替わりは注目を浴びた。

 「ブエナと同じレースに(他の馬で)何度も乗っているし、今回の相手関係もよく知っている騎手。中山コースもよく知っているから、彼に任せておけば間違いないでしょう。どんな乗り方するのか、楽しみですよ」

 今年はロジユニヴァースでダービー、カンパニーで天皇賞・秋マイルCSのGI3勝。もっともノッてる男、それが横山典騎手だけに、調教師の信頼は厚い。

 「有馬記念だからね。ここまできたら全部強い馬たち。でも3歳牝馬で53キロは有利だろうし、ここ2、3戦は納得できない競馬だったから、最後は締めてもらいたいね」

 春は「ダービーでも勝てるのでは」と噂されるほど強かったブエナビスタ。ファン投票で10万4544票と女傑ウオッカとは約500票差の2位は、誰もが認めた強さの証明。グランプリ有馬記念で女王の帰還。それを誰もが待っている。