良血開花!フォゲッタブル「今までで一番」

良血開花!フォゲッタブル「今までで一

 超エリートホースが09年を締めくくる。暮れの大一番「第54回有馬記念」(27日、中山芝2500メートル)の追い切りが23日、美浦栗東トレセンで一斉に行われた。栗東では名牝エアグルーヴを母に持つ良血馬フォゲッタブルが、抜群の動きを披露。フランスの名手クリストフ・ルメール騎手(30)を鞍上に迎え、管理する池江泰郎調教師(68)は、87年メジロデュレン、06年ディープインパクトに続く、調教師最多タイとなる有馬記念3勝目を狙う。なお同レースは24日、出走馬、枠順が確定する。

 上昇一途。軌道に乗った3歳馬フォゲッタブルが、上がり馬らしい覇気にあふれた動きで、栗東ポリトラックコースを駆け抜けた。新コンビを組むルメールが騎乗し、古馬1000万クラスのメジロラフィキをパートナーに併せ馬。3〜4コーナーでスムーズにギアチェンジ。直線で外側から馬体を併せる形になったが、併走状態になったのは、わずかな時間。いっぱいに手綱をしごかれたパートナーに対し、軽く気合をつけられると鋭く反応。瞬時のうちに3馬身突き放してゴールした。

 「素直で乗りやすい馬。状態はエクセレント。ラスト400メートルの加速が素晴らしかった。満足だよ」。日本でも数々のビッグレースを制し、有馬記念優勝の経験もあるフランスの名手は、最大級の賛辞を続けた。「乗っていてスタミナを感じる。脚の運びもスムーズ。いずれはG1を勝つ能力があるのは間違いない。もちろん、今回かもしれないよ」

 母は96年オークス、97年天皇賞・秋のG1・2勝を含む重賞7勝と、牡馬顔負けの成績を残した名牝エアグルーヴ。その母ダイナカールも83年のオークス馬という、母子3代にわたる超良血馬だ。体質が弱く、夏場はまだ1000万条件を勝ち上がれないでいたが、秋以降に血が目覚めた。セントライト記念3着で権利を獲得して出走した菊花賞で鼻差2着に激走。続くスポニチステイヤーズSで古馬を一蹴。G2ウイナーとして、堂々とグランプリに駒を進めてきた。

 管理する池江郎師は感慨深げに振り返る。「セレクトセール(07年に2億5725万円で落札)から注目されていた馬。ダービーに出られなかったのは残念だが、ようやくここまで来た。弱かった春のことを思えばハードに調教できているし、終わった後もすぐに息が回復する。トモ(後肢)に筋肉がついて男馬らしい体形になってきた。今までで一番いい状態で出せる」。厳しいトレーニングに耐え、ひ弱なお坊ちゃんは、たくましき名門のプリンスへと変ぼうした。

 「思っていた以上に成長している。経験豊富な馬たちに胸を借りる立場だが、そんなに差はないはず…」。有馬記念2勝の名トレーナーは控えめながらも自信を口にした。祖母、母から受け継がれたDNAは、大舞台でこそ真価を発揮する。(浜田 公人)