ノア&小林慎 重賞初制覇

 笑顔がはじけた。フェブラリーS(21日・東京)の前哨戦を制したのは、直線で一気に脚を伸ばした11番人気グロリアスノア小林慎一郎騎手(28)=栗東・矢作=は、これがデビュー11年目にしての重賞初V。満面の笑みで喜びを爆発させた。東京巧者を誇示したパートナーとともに、3週後のG1に殴り込む。1番人気に推された武豊騎乗のサマーウインドは2着に敗れ、連勝は5で止まった。
 顔をくしゃくしゃにして引き揚げてきた小林慎は、グロリアスノアの首をたたきながら「ありがとう、ありがとう」と何度も繰り返した。デビュー11年目にしてのうれしい初重賞V。それは愛馬の力を信じ切った騎乗がもたらしたものだった。
 人気を集めたケイアイテンジン、サマーウインドが引っ張る展開を、焦らず中団馬群で追走。「予定していた通りの位置。力を信じていたし、伸びてくれると思っていたから」。直線入り口で目の前の馬群が一気に開けた。あとは追いまくるだけ。馬場のど真ん中を鋭伸して残り200メートルで先頭に立つと、最後まで脚色は衰えることなく後続を完封。競馬場で観戦していた母・豊子さんの前で見事に金星を決めた。
 「とにかく夢中で必死に追いました。たまらないですね」。喜びをかみしめる小林慎は、騎乗機会が増えず、引退を考えた時期もあった。「何年前だろう。乗り数もなかったし、どうしようかなって…。それだけになおさらうれしい」。矢作厩舎の開業とともに05年から所属騎手として主に調教をつける裏方として奮闘。昨年の関西調教師リーディング奪取にも大きく貢献した。
 「アイツで勝てて良かった。我慢して乗せ続けたかいがあった」と感慨深げに語ったのは矢作師。「休み明けでも90点の出来だったし、なんでこんなに人気がないのか不思議だった。やっぱり慎一郎が乗ってたからかな。ホントにうまく乗ってくれた。言うことなしだね」と暖かい笑顔でまな弟子の勝利を祝福した。
 さあ、次はG1だ。「まだまだボクが力不足。パートナーが務まるように必死で頑張ります」。小林慎は表情を引き締める。この日の勝利で〈3・1・0・0〉。東京巧者を猛烈にアピールした愛馬とともに強敵に挑む。