さすがエスポワールシチー11秒6

さすがエスポワールシチー

 10年のG1開幕戦「第27回フェブラリーS」の追い切りが17日、美浦栗東トレセンで行われた。昨年のJCダートの覇者エスポワールシチーは、主戦の佐藤哲三(39)を背にCWコースで人馬一体の呼吸のあった動きを披露。G1・4連勝での戴冠へ万全の態勢を整えた。一方、史上初の同レース連覇を目指すサクセスブロッケンも、坂路で迫力あるフットワークを見せつけた。

 この動きは歴史的名馬のレベルだ。パワフルなトモ(後肢)、素早く繰り出される四肢、圧倒的なスピード感。エスポワールシチーがG1・4連勝へ、力強く王手をかけた。

 佐藤が乗ってのCWコース。角馬場では子供っぽいしぐさを見せたが、コースでは人馬一体、万全の呼吸で進む。直線を向くと、馬が自分からスピードを上げた。残り100メートルで鞍上が軽く左の肩ムチを入れる。一瞬にしてフットワークが大きくなった。パワフルに四肢を繰り出し、最高の反応でフィニッシュ。水を含んだコンディションの中、ラスト1F11秒6。文句なしの動きだった。

 馬を下りた佐藤は、相棒の後ろ姿をうっとりと眺めた。「お尻がプリプリ。凄いトモになっている」。動きへの評価も高い。「手応えは良かった。息をつくりたかったので、半マイルから(時計を出す)のイメージで。タイムは変わらなくても中身は少し違う」。ラストに負荷を掛け、体、息ともしっかり仕上がった。

 07年に2度、落馬による骨折に見舞われた佐藤。気持ちが沈んでいる時に、この馬と出合い、勇気をもらった。「こいつとなら、またG1を勝てる」。徹底的な教育が始まった。佐藤哲は過去に得た経験のすべてを注ぎ込んだ。エスポワールも与えられた課題をこなしていった。昨春からG1・3勝を含む重賞4連勝で、日本ダート界のトップへ。「やれることが増えてイメージに近づいた」。厳しい“佐藤先生”も合格点を出すレベルに達した。昨年のこのレースは4着だが「力自体は変わらなくても効率のいい走りができるようになった。今年は違う」と自信を見せた。

 ハナを狙う同型は多いが「いつもハナを切っているわけではない」と軽くいなした佐藤。最高の信頼で結ばれた相棒とともにG1・4連勝の偉業を目指す。