池江氏 バトルバニヤンで全場重賞制覇へ
ラストサマーに勲章を。今週の七夕賞に1つの大記録が懸かっている。バトルバニヤンが1着なら、池江泰郎師がJRA全場重賞制覇を達成するのだ。来年2月で定年、引退となる名伯楽にとって残されたチャンスは今回と福島記念(11月20日)しかない。偉業達成へ、厩舎一丸となってメモリアルVに挑む。
記録へ向かって走れ!七夕賞のバトルバニヤンには池江郎厩舎の「JRA全場重賞制覇」が懸かる。前哨戦の福島テレビオープンで1着。約1年7カ月ぶりの美酒だった。しかも馬場入り時に放馬しての結果。担当の森田助手が苦笑いした。
「手綱をかんでしまったのでハミが外れてしまった。でも、みんなと一緒に退避所へと走っていったので、すぐに捕まりました。中1週ですがカイバも食べていますし変わりないですよ」
前走前から担当になったとあって付き合いは短い。だが、変化はレース前から感じていたと言う。「追い切った後、行きっぷりが変わりました。“自分から進んでいかない”と聞いていたのに、話が違うなと。以前は村本さん(調教助手)が乗っても時計が出なかったのに」。村本助手と言えば、972勝を挙げた往年の名ジョッキーだ。その腕をもってしてもスランプ時は坂路ラスト1F13秒台がやっとだったとか。これは馬の気持ちが変わったとしか表現のしようがない。
デビュー時からここまでの姿を知る池江助手も太鼓判を押した。「ええ感じで来ているみたいやね。前から夏場に向けて良くなっていくところがあるよね」。確かに7〜9月は10走して3勝、2着2回の好成績を残している。暑い時季はこの馬にとって稼ぎ時なのだ。そして注目の記録について。池江助手は池江郎師のおいで開業当初から所属している間柄。この日不在だったトレーナーに代わり、胸の内を語ってくれた。
「先週の競馬(ラジオNIKKEI賞でトゥザグローリーが5着)の後に“来週もある”ってコメントしてたでしょ。親方(池江郎師)がそこまで言うということは力が入っているということ。勝ってほしいね」
先週は1番人気を背負いながら達成できなかった。今週こそ。ただならぬ闘志とともに、再び初夏の“みちのく”へ向かう。
善臣2週連続重賞V!アロマ大物の香り
秋の飛躍を目指す3歳馬が競ったラジオNIKKEI賞・G3(4日、福島)は、ダービー出走を逃したアロマカフェ(美浦・小島太厩舎)が直線で抜け出して重賞初制覇を飾った。柴田善臣騎手(43)は、先週の宝塚記念に続く勝利。2着は首差でクォークスター。ダービー7着で、1番人気のトゥザグローリーは5着。
グランプリ男の手綱がまた、さえ渡った。好スタートを決めたアロマカフェは、中団の外でじっと我慢を決め込んだ。向こう正面で1番人気のトゥザグローリーがすぐ横を勢いよく追い上げても、柴田善は動じる事なく、グッと力を蓄える。
3コーナー手前から自然とスピードに乗り、少しずつポジションを上げて迎えた直線。鞍上の右ムチが大きくしなると、ググッと加速。見事に馬群から抜け出した。
「ゲートをうまく出て、いい位置につけられたし、4コーナーの立ち上がりは、すごくいいリズムで走れた」。ゴール前で大外から猛追したクォークスターに首差まで詰め寄られても「脚が残ってたから」。わずかな差でも、6月27日の宝塚記念をナカヤマフェスタで制した男に、不安はなかった。
前走の青葉賞(4着)に引き続き手綱を執った柴田は「GOサインを出せば、どこからでも出て行ける馬。前回、初めて乗ったときは、未完成な部分が多く、まだ無理する必要はないと思った。結果的にダービーの出走権を取れなかった事が良かったのかもしれない。これからどんどん良くなる」と目を細めた。一度の騎乗でパートナーの潜在能力の高さを見抜いたベテランは、期待を膨らませた。
小島太調教師は、2勝目を挙げた前々走の山藤賞(中山)を高く評価した。「母(カリーノカフェ)が短距離馬だったから、2000メートルであの競馬(1着から5着まで鼻、鼻、鼻、首差)をしたのは大きい。まだ伸びしろはある」。力強い言葉で、成長に胸を躍らせた。
「まずは放牧に出し、状態を見てから。(菊花賞)トライアルのセントライト記念あたりを考えて」。指揮官は万全の態勢を整え、最後のクラシックを騒がせるつもりだ。
>アロマカフェ 父マンハッタンカフェ、母カリーノカフェ(父ハートレイク)。牡3歳の黒鹿毛。戦績8戦3勝。総収得賞金6752万5000円。重賞初勝利。生産者・北海道新冠町の浜口牧場。馬主・西川光一氏。美浦・小島太厩舎所属。
武豊、復帰は小倉開幕週以降
3月27日の毎日杯で落馬して、左鎖骨遠位端骨折、腰椎横突起骨折などの重傷を負い、戦列を離れている武豊騎手(41)=栗東・フリー=の復帰は、17日の小倉開幕以降にずれ込むことになった。
来週10日からの騎乗へ向け準備をしていたが、1日に同騎手のサイドから、プロキオンS(11日、阪神)で依頼されていたマカニビスティーの矢作調教師へ断りの連絡を入れたことが分かった。
この日更新した自身のホームページでも「ファンの皆さんには、もう少しお待たせしてしまうことになりますが、肩は着実によくなっています。本当に、もう少しの辛抱だと思っています」とコメント。万全な状態になってからカムバックすることを強調している。